top of page
「 Good night sweet prince 」
2023
ceramic, single-channel video
Good night sweet prince: テキスト

Good night sweet prince: 動画









Good night sweet prince: Pro Gallery
昨年の春、祖母が亡くなった。
私は遺体のそばで泣いていたが「もうそこにはいない」とも感じていた。祖母は扱いにくくなった体を脱ぎ捨ててどこかに飛んでいってしまったようで、体というものがどれだけ重くて窮屈ないれものかを実感した。
プロのバレリーナを目指していた頃、同じように体が窮屈だと感じることがあった。思い浮かべる長くてしなやかな動きは私の手足では足りないし、どれだけ軽々跳ぼうとしても重く落ちていくだけだった。舞台の上では与えられた役に自分をはめ込み、見えない何かに支配されているようで息苦しかった。ただバレエだけをやってきた自分が舞台を下りたらどうなってしまうのか怖くて、その息苦しさを長引かせていた。
自由になりたかったが、何者でもなくなるのが不安だった。
舞台の上にいれば"役"が私を守ってくれる。それで窮屈な体にしがみついて、役を演じ続けていた。
この世界が大きな劇場だとしたら、私たちはそれぞれの「ひと」という役を演じさせられているようなものだ。別に選んだ役でもないが、みんな与えられた役を演じ続けている。いつでも舞台を下りて自由にだってなれるが、いつかそうなれるなら二度となれない今の役を演じ切るまでしがみついてみるのもいい。
いつかはどうせ空っぽになるただの体なのだから。
Good night sweet prince: テキスト
bottom of page